「その死に方は、迷惑です」  本田桂子著 集英社新書 感想

趣味の読書に絞れば小説や、素人向けの哲学入門書、少し仕事よりになれば英語学習書や経営関連のビジネス書(簡単なやつ)を読んでる、と言うことになるわけだけど、実は普通に生活をしていればいろいろな活字に目を通すわけで、新聞読むし、Web記事読むし、週刊誌、夕刊紙も時には、PC雑誌、その他漫画、必要に応じて様々な実用書を際限なく読んでいるわけであります。
で、表題の本。五十代になって何年かたち、大きな健康不安を抱えているわけでは無いが、そろそろ考えねばならない年頃かと思ったことが一つ。それから最近僕自身は関わりがないが、割合身近で相続の実例があったこと。財産の状態から言って特に裕福ではない普通の方が亡くなったわけだが、相続権を持った人たちの間での手続きは必要となり、特にクレームを起こすことなく終了したものの、それでも胸の内では穏やかならざるものがあったようにも聞いていたので、これは金のない僕もやはりきちんとしておいた方が良いのかな、と思ったわけであります。
 なぜ遺言書が必要か、などというところは飛ばし読みし、手続き事項を読み、それなりに知識は得られた。特に自筆遺言書が結構危ないものだと言うことはよく理解できた。
 それから、もう常識だと思うけれど、遺言書は金持ちだけのものではないということ。百万でも残すものがあれば手続きは面倒だし、争いの元になるということ。(一円単位で争うという話を聞いたこともある)
 全部を読んでも分からなかったのは、死んだとき遺言執行人がどうやってそれを素早く知るか、と言うこと、庶民の身の上としてはしょっちゅう出入りしている弁護士がいるわけではないし、そのあたりがよく分からなかった。どうせなら完全にしておきたいからね。遺言執行人もこれなら大丈夫という仕組みを作っておきたい。例えば信頼する人が先に亡くなってしまってもちゃんとバックアップを作っておくとか。
 興味深かったのは著者後書き。日本人はどうして遺言書を書きたがらないか、書いても隠したがるのかと言うこと。生命保険に加入するように、死後の財産処分をスムーズに進めるための遺言書を作ってほしいと著者は言う。
 僕も生命保険には入っているが、遺言書にはちょっと抵抗がある。これは結構考える価値のある問題かもしれないけれど、とりあえず生命保険は金が入ってくる、という形になっているので抵抗が少ないこと、遺言書は自分の財産をリストアップして整理しなければならないので結構面倒くさいこと、死というものと自分が死んだときの周囲の状況を具体的に想定しなければならず、結構しんどいこと、(それなりに死に向き合うと言うことではあるよね)をあげておきましょう。ああ、でもこれでは日本人が特に書きたがらない理由にはならないか。

 僕の好みとしては、もっと読み物的要素を減らして実務的な内容を増やしてほしかったと考えるが、今の新書の作り方というのはこういうものなのかもね。 類書も多いので、星三つ。(満点星五つ)

12/4追記
なんだか消極的な書き方になってしまっているけれど、遺言書を準備しようと思ってまず手に取る本としては十分。また、生前三点セットの説明は
素人には分からない大事な点かもしれない。尊厳死の意思表示をきちんと残しておくことの大切さ、なんて遺言書以上に考えないからね。
と言うことで、プラスの評価をはっきり書いておきます。

その死に方は、迷惑です―遺言書と生前三点契約書 (集英社新書)

その死に方は、迷惑です―遺言書と生前三点契約書 (集英社新書)