2021-01-01から1年間の記事一覧

「坊ちゃん」夏目 漱石著 岩波文庫で読みました

よく読まれていると言う意味では、夏目漱石の代表的作品の一つである。若い頃に一度読んで、その時の印象は、評判とは違っていま一つスカッとしないな、と言うものであった事を覚えている。今回再読し、やはり同様の感想を抱いた。 坊ちゃんは父親や母親に愛…

「安いニッポン  「価格」が示す停滞」中藤 玲著 日経プレミアシリーズ

日経新聞に2019年12月に連載された記事を元に加筆され纏められた本。一口で言えば、今や日本の物価は世界の中で、アジアの中でも安く、コロナ前に多くの外国人が日本を訪れていたのは、日本が優れているからでも、多くの日本ファンがいるからでもなく、日本…

「マンガでやさしくわかるオープンダイアローグ」 向後義之 久保田健司著 日本能率協会マネジメントセンター

オープンダイアローグと言う言葉を知ったのは、斎藤環氏のtwitterからである。幾つかの短いメッセージから、これは面白いかもしれないな、と興味を持った。その斎藤環氏が、マンガでわかるオープンダイアローグの本を出すというので、本屋で探したところ、一…

「天人五衰」 三島由紀夫著 新潮文庫  感想文

三島由紀夫の「豊饒の海」最終巻(第4巻)であり、三島由紀夫最後の作品である。昭和45年の11月25日に脱稿し、その日に、いわゆる三島事件により自決した事になる。 しかしここでは、文学的な感想のみ述べることとする。「豊穣の海」は、法律家である本多繁…

「人新世の「資本論」」 斎藤幸平著 集英社新書  感想文

新書としては、注を含めて375ページある、なかなか分厚い本である。加えて固い内容にもかかわらずよく売れているらしい。私は知人がfacebookで紹介しているのを見て興味を持ち読んで見た。感想を網羅的に書こうとすると膨大になるし、「武器としての資本論」…

「単純な生活」 阿部昭著 小学館  感想文

小学館のP+D BOOKSという新しいスタイルの本である。ペーパーバック+デジタルだそうで、本の作りは、確かにペーパーバックで六五〇円と安い。阿部昭は、この本の終わりに書かれた紹介によれば、1934年生まれ、1989年没である。一般にはおそらく短編…

「武器としての「資本論」」 白井聡著 東洋経済  感想文

白井聡氏は、「永続敗戦論」で名をあげた(と、素人の私には思える)学者である。本のカバーに掲載された紹介によれば1977年生まれであり、京都精華大学教員となっている。若いが、この年代であれば、准教授とか、教授などという肩書きであってもおかしくな…

「袋小路の男」 絲山秋子著 講談社文庫  感想文

絲山秋子の連作短編2編と「アーリオ オーリオ」という短編が収められている文庫本である。はじめの2編「袋小路の男」と「小田切孝の言い分」は対になった作品である。 「あなたは、袋小路に住んでいる。」と言う文章で始まる「袋小路の男」は一人称の小説で…

「未完の資本主義」 ポール・クルーグマン他著 大野和基インタビュー編      PHP新書

デビッド・グレーバー(David Graeber)の「ブルシットジョブ」という本が話題になって、読んで見たいと思い本屋で探してみると、とても厚い本だったので、基本となる知識もまるでなかったから、もっと手軽な入門書的な本はないか、と本屋の端末で検索して見つ…