2023-01-01から1年間の記事一覧

感想文 「教育は何を評価してきたのか」  本田由紀著  岩波新書

11月15日に感想をアップした「日本ってどんな国」を著した本田由紀教授の本である。 冒頭、上記の著書と同じように、社会学的な手法で日本人のスキル、意識についての分析が述べられる。 それによれば、日本人は、読解力、数学、科学と言った分野だけで…

「諦念後」  小田嶋 隆著  亜紀書房

小田嶋氏は1956年生まれ、2022年6月に惜しくも病気のために世を去った。私より数年年長であるが、ほぼ同世代と言うことになる。 小田嶋氏が晩年(今となってはそう言わざるを得ないが)に日経ビジネスなどに連載していたエッセイ、また、twitterでの書き込み…

「The BEST 10分間ミステリー」  宝島社文庫

今年の3月に中山七里氏の「さよならドビュッシー」の感想をアップしている。デビュー作としてのレベルの高さを絶賛したのだが、欠点として人物描写の浅さを挙げている。 これは、執筆経験を積めば技術が高まるはずなので、習熟した中山氏の作品を読みたいと…

「日本ってどんな国」 本田由紀著 ちくまプリマー新書

著者は東京大学大学院教育学研究科教授。 一般向けにも多数の著作を発表している、新聞にも度々登場する著名な学者である。 この本は、日本の家族、ジェンダーや学校や、仕事や、友達などの有り様を、各種の国際比較が可能な調査、統計を駆使して社会学的な…

「史的システムとしての資本主義」 ウォーラーステイン著 川北稔訳 岩波文庫

ウォーラーステインはアメリカの学者で、1930年生まれ、ポーランド系ユダヤ人のとのこと。2019年に亡くなっている。世界システム論に関する膨大な著作がある。あれこれの本の中で名前が出てくるので何か簡便に分かる著作はないか、と探したら2022年に文庫本…

「物語 中国の歴史」 寺田隆信著 中公新書

中国の歴史を概括的に知りたいと考えて手にした一冊。現代中国の政治経済、文化を考える上でも、また漢字文化圏の東の端の国に生まれ育った日本人としても、中国の歴史の流れを知っておくことは必要だろうと考えている。 随分以前であるが、陳舜臣作の中国の…

「ペスト」 カミュ著 新潮文庫

随分前に買ってあった文庫本を、夏休みに改めて読み始めて、昨日読み終わった。久しぶりに、文学的咸興が深くやはり優れた文学は良いと思った小説であった。オランというフランス領のアフリカの海辺の都市が舞台である。(現在はアルジェリア領)ペストが流行…

「さよならドビュッシー」 中山七里著 宝島社文庫

前回感想文をアップした「元彼の遺言状」もそうであったが、この作品も、有隣堂しか知らない世界という、youtube番組をみて、作者、作品に興味を持ち、読んだものだ。参考にURLを挙げておこう。 https://www.youtube.com/watch?v=HwvSdRFQqrk 私は名前す…

「元彼の遺言状」 新川帆立著 宝島社文庫

久々のミステリー作品である。2020年に「第19回このミステリーがすごい大賞」を受賞した作品と言うことである。綾瀬はるか主演でドラマ化もされている。 私自身は、ミステリーは好きなのだが、最近の大量に出版されるミステリーの中で何を読んで良いか…

「家庭用安心坑夫」  小砂川チト著 群像2022年6月号掲載版 感想文

令和4年上半期第167回芥川賞候補作である。「おいしいごはんが食べられますように」を文藝春秋で読んだわけだが、たまたま候補作である本作についても群像を持っていたので今回芥川賞候補作になっている作品を読んでみて感想を書いてみることにした。本作は…

「美味しいごはんが食べられますように」  高瀬隼子著 文藝春秋掲載版 感想文

令和4年上半期第167回芥川賞受賞作である。芥川賞受賞作を好んで読んでいるわけではないのだけれど、当代の一流作家と思われる方々の選評を読むのが面白くて、掲載号の文藝春秋をなんとなく買ってしまう。ところが、小説というのは実に好みの分かれるもので…