それでは、「日本人が誤解する英語」 書評、というか感想

著者のマーク・ピーターセンさんは、来日してから長らく日本人に英語を教える、日本人の英語論文を添削する仕事に携わっている方で、今は関西方面の大学の先生をしているらしい。ずいぶん前だが、岩波新書で「日本人の英語」というベストセラーあり。
 まず対象は大学生から社会人というところでしょうか。とりあえず日本のカリキュラムで勉強してしまった日本人に、「でもさあ、ほんとはこうなんだよね、」と語りかけるような感じ。ただしかなりしつこく、ねちねちと。そこが大学教師らしいといえばらしい。
 日本の英語文法書の意味がよくわからない、たとえば現在完了について日本の文法参考書は一般に、経験、継続、完了、などなど分類しているが、意味がない、と喝破している。そういう受験英語を一生懸命学んできた僕にはむしろ痛快でさえあった。また、単数・複数、冠詞の重要性については、熟読に値する。ちなみに、僕が買った版の帯には、I like dog. は私は犬が好きではなく、犬の肉が好きという意味だ、と書いてある。大変キャッチーだけれど厳密にはこういう逐語的対応をしているわけではない、と言うことは本文を読めばわかる。その意味でこの帯はちょっとルール違反だね。同じく、「NO MORE GUN」という表現はネイティブには意味がわからない、と言う話も大変示唆的だった。ネイティブは常に単数か複数か、あるいは可算か不可算かという判断をしているというか、そのような区別があって初めて一つの名詞として成り立つ、と言うことがおぼろげだけれど見えてきた感じ。少し理解が進んだというささやかな喜びがありました。
 そして、現在完了、受動態、使役動詞などについてもそのようなささやかな喜びがありました。
 一方、日本の辞書の訳についての批判については、そもそもそんなに逐語的に言葉を対応させるつもりは日本の辞書編纂者にはないのでは、と思わないでもなかった。
 しかしながらこれからも時々読み返したいと思った本でした。ブックオフには売りません。

日本人が誤解する英語 (光文社知恵の森文庫)

日本人が誤解する英語 (光文社知恵の森文庫)