「それってどうなの主義」 斎藤美奈子著 文春文庫 感想文

だいぶ前に、古本屋で百円で買ったもの。主に九十年代の新聞雑誌に書いた雑文・評論?を集めたもの。という種類の本は、なかなか焦点が定まらずにつまらないと言うことが往々にしてあるわけで、この本もそういうところがないわけではない。
あと、斎藤さんの題をつけるセンスが、いまいちずれている、それも本人の意識しない、例えば人で言えば体格とか、後ろ姿とか言う部分でちょっとずれている、ずれていると言って悪ければ著者が意識していない効果が出ているような気がする。 面白いところを狙っていながら意外に角が出ているような。まあ、角が出ていてもいいわけではあるが。僕が「それってどうなの」という言い回しが好きではないだけかもしれないけれど。
「ものはいいよう」でも感じたのだけれど、説教くさくなってしまうと、言っていることが正しいなと思っても、とたんに読む気を無くしてしまうのである。
 記事によって、その後10年あまり後の変化についてフォローが入っているところが本を丁寧に作る著者らしい。読み進むにつれて、なるほどそんなこともあったな、と思うことも多く、楽しく読めた。
 僕なりに突っ込みたい話題はいろいろあるが、実はこの本の白眉は、池上彰による解説だったのかもしれない。
 著者の批評精神を称揚し、文体を模倣して見せ、かと思うと部分的には著者の知見を自己の取材体験によって訂正し、石原都知事に対する著者のスクウェアな批判的態度を褒め称え、軟弱な態度に見せて自分もさりげなくチンピラ都知事と言い放つ!!
 チンピラ都知事ですよ、チンピラ都知事斎藤美奈子どころではない。骨があるなあ。
 もっとも僕は石原都知事がそれほど嫌いではないのだけれど。(政治家としては評価しません)
 解説を読んだだけでも、この本を読んだかいがあった。いや、本文も面白かったけれど。

それってどうなの主義 (文春文庫)

それってどうなの主義 (文春文庫)