「俳句はかく解しかく味う」 高浜虚子著 岩波文庫

だいぶ前(二ヶ月ぐらい前?)に、ついでに買った本である。俳句はあまり好きではない。どう理解しても、「いや、それはね・・・」と通人が、あるいは半可通がしたり顔で訂正してくるような雰囲気を勝手に感じているからである。
しかし、日本に生まれ育って、日本で教育を受けたものである以上、ざっと数えても五十以上の俳句は諳んじているし、そのほとんどは芭蕉の句である。少しはどんなものなのかな、と言う興味がないではない。
そんな理屈はともかく、この本は枕元において、寝る前にしばし浮き世離れした、かつ物静かな気分に浸れればそれでいいと言う思いで買ったものである。
 ところが、存外、面白く読めた。意外にあたりであった。こういうことがあるから、本との出会いというものは面白いのである。
 まず虚子の態度が非常にはっきりとしている。悪い句の例を出して、どういうところがいけないかと言うことを明瞭に述べる。また良い句についても同様である。
最終部分では、数句についてさらに詳細に解し、解説する。なるほどそういう風に解し、味うものなのだな、ということが素直に頭に入ってくる。もちろん、虚子の見方だけが、すべてではないだろうが、近代俳句においては、一番オーソドックスな広い、未払いの良い道筋なのだろうと感じられる。普通俳句の短い解説など見ると、何でも褒めるような感じで、歴史的な位置づけや価値がよくわからなかった。俳句を見る上での羅針盤を得た思いである。まあそれだけ不勉強であったと言う話だけかもしれないが。一般社会人としては、有り難い本であった。

俳句はかく解しかく味う (岩波文庫)

俳句はかく解しかく味う (岩波文庫)