「銃・病原菌・鉄」 読了

漸く、下巻を読み終えた。下巻では、文字の発生についての考察が面白かった。読み終えて思うことの一つは、著者が言いたいことを簡単にまとめることの愚かさである。大変に広い範囲の時間、空間、学問の範囲にわたっての知識を渡り歩くようにして綴られた本である。安易にまとめることは簡単に反証が見つかるだろうし、まとめる事が必ずしも必要ではないとさえ思える。
このような知のありよう、700万年という人類史、世界全体の地理的拡がりを捉え、特定の時代にとらわれた歴史認識(例えばヘーゲル)の範疇から出て、自然科学の知見をあるいは進化人類学の知見を縦横に利用し、しかも謙虚で、アカデミックな世界に閉じこもらず、フィールドでの探査を重んじる、といった知のありようが、21世紀的であり、また僕たち皆に求められているものだ、と感じる。白人優位主義も、先進国、途上国と言った区別の背後にあるイデオロギーもみんな一緒に、もう古い、と言ってしまえるような知的パースペクティブ。そのようなものこそ、学ぶべきものなのだろうと考えた。