俺たちバブル入行組     池井戸 潤著  文春文庫

下町ロケット直木賞を受賞した作家の以前の作品である。
どんな作風か、試し読みのつもりで古本屋で100円で購入して、暫く積ん読状態であったのを、先週末一気に読了。
一口で言って面白かった。バブル期の就職活動の様子や、銀行の融資の手続き、行内人事など、年代は違うけれど、また業種も違うけれど、広い意味で同じビジネスの世界に居る、あるいは就職という課程を経てきたサラリーマンとして興味がもてた。また、大阪の国税の振る舞い方など、人づてに聞いたことのある様子と附合して笑ってしまった。
プロットは、ある意味単純で、上司の悪巧みによって窮地に陥った主人公がめげずに頑張って、最後には復讐を果たすというもの。主人公のキャラクターが途中から、半スーパーマン的に見えてきて、また勧善懲悪のこしらえがはっきりしていて、僕としてはやや興ざめの部分もあったけれど、山場で夢中になって、電車を乗り過ごすほどであったのも事実。
 文章のリーダビリティはなかなか。変に捻ったところがなく読みやすい小説だった。
ということで、星三つ。
企業小説として、この作家の本を幾つか読んでみたいという気になった。