「インテリジェンス人間論」 佐藤優著  新潮文庫

もう、数年前のことになるが「国家の罠新潮文庫版を読んで、印象が強烈であったので、以来佐藤本を何冊も続けて読んだ。「自壊する帝国」や鈴木宗男との共著「反省」などなど。(余談であるが国家の罠は、川上弘美の解説も良かった。ここに川上弘美をもってくる編集者はセンスが良い)
 「インテリジェンス人間論」は新潮45などに書いた人物評を中心とした文章を纏めたもの。
 内容は、佐藤本をおよびWeb エッセイなどをあれこれ読んでいる人ならすでにおなじみのエピソードも多い。米原真理が橋本龍太郎に口説かれた話とか、ロシア女性の理想のセックス回数は週16回とか。もちろんそういう色がらみの話ばかりではないのだが。
 人物名、日時、ははっきり即物的にしるし、文章を引用する場合は部分的ではなく長く全体を引用するという特徴ははっきり出ている。
 こういうところは、外務官僚として長く働いたことにより訓練され身につけたものなのだろう。
 文章としてはややぎこちない感じのものもあり、ややばらついた印象。僕としては政治家の人物論よりも、キリスト教に関連した文章の方が面白く感じられた。政治家人物論はおそらくほかで何度も読んでいるので、新味が感じられない、と言うことなのだろう。
 本書からは離れるが、佐藤氏はTPPについては、参加するべき、これは中国対米国というブロックのどちらに着くかという問題で、アメリカに着くべき、と言う論陣を張っている。それはそれでうなずけるとして、ではTPPの内実、交渉下手な日本がただアメリカの食い物になってしまうだけではないかという反対派にはどう答えるのだろうか。例えば、よく言われるIDS条項にはどう対処するべきと考えているのだろうか。
 このあたりは、じっくり聞いてみたい。Webでの発言などを含めて引き続きフォローしたい言論人である。

インテリジェンス人間論 (新潮文庫)

インテリジェンス人間論 (新潮文庫)