中島義道著 カントの人間学   講談社新書

僕は中島義道氏の文章とは相性が良いようだ。どの本も割合面白く読めてしまう。この本はカントの人となりを生い立ちや、彼と親しかった人たちの証言を元に纏めたもの。
カントが人間関係を積極的には築かない人であって、貧しさに耐え、刻苦勉励し、金銭に対してもしわい人であったらしいことと、著作との照応などが語られる。
それは、得てして日本人から西洋文化を見る場合に、ほとんど不可避的に、且つ無意識に取ってしまう仰ぎ見る姿勢を突き崩すために有効に働く。
ゴシップ的な興味も大いにそそられるけれど、むしろ、カント=聖人的な把握を揺るがせることこそにこの本の意味はあるのだろう。
 ということで、★4つ。かな。