七人の侍           黒澤明 監督作品 1954年

七人の侍

黒沢 明監督の代表的作品の一つ。アメリカで「荒野の7人」としてリメークされた事でも有名。
戦国時代、野武士集団に荒らされる農民が侍を雇って村を守る話。筋自体もよく知られているのでは、と思う。

初めて見たのだけれど、第一印象は、長い。描写がたっぷりとしていて起伏に富んでいるから、長い。現代の観客ならばなかなか耐えられないのではないかと思った。何しろ途中に休憩が入るのだから。
また、戦闘シーンは、なかなか迫力があるが、今ひとつ武士同士の斬り合いのすさまじさ、といったものは感じられなかった。
もっとも、野武士と農民の戦いは、刃と刃を綺麗に交えるようなものではない、という考えが監督にあったのかも知れない。野武士と農民の戦いでは、泥だらけ、もみくちゃになって死ぬのである。
一方で、今時の映画の合戦シーンは言わば見せ場だけをつないだようなものになってしまっていて、僕もそういう演出に慣れて仕舞っていると言うことなのかもしれない。

リーダー志村喬は秀逸。大げさではなくそれでいて重みがあり、動作の俊敏さは素晴らしい。もっとも俊敏さという点では、誰もいい。加東大介でさえよく走る。少し前傾姿勢になってよく走る。走る場面は、もしかするとフィルムの早回しをしているのでは、と思うくらいである。(半ば本気にそう思う)
おばさん役でしか知らなかった津島恵子が、若くて可愛らしい。宮口誠二は精悍だ。三船敏郎は大きく焦点が当てられているのだが、僕にはひょうきん者風の演技が今ひとつに思えた。

演技はストレートで大振り。やや古いと感じてしまうせわしない感受性がすでに僕には備わってしまっているようだ。
志村喬が静かに立っていて、やがてゆっくり坊主頭をなでる所をゆっくり見せる場面など、嫌いではないのだけれどね。

緩まない演出、野武士、農民、侍の多面的な描写など名画であることに異存はないが、今の僕にはちょっと重かったか。保存しておいて再度みたい。