「戦争の犬たち」 フレデリック フォーサイス著 角川文庫 読了

フォーサイスの短編がけっこう好きなので、長編の手始めに読み始めた。
すでに書いたように現代とは時代の違いが顕著。ここではフォーサイスの世界観、政治観が明確に出ていて、あるいは出過ぎていて、小説としてはご都合主義に過ぎる、という気がするが、もちろん部分部分では読者を引き込むところがある。
冒頭のアフリカで亡命していく将軍の描写。
シティで奸計を巡らせる資本家。
しかしなによりの読みどころは、戦争より、戦争の準備のための100日だろう。これはちょっと特殊な読み方かもしれないけれど、サラリーマンとして輸出入にちょっとだけ関わったことのある(多分多くの勤め人が関わったことがあるレベルだけれど)僕としては、法の網をくぐり抜けて、いかに武器を集め、アフリカまで運ぶか、というロジスティックスの部分が詳細で面白かった。この詳細さがいかにもフォーサイスらしいところで有る。
この小説を読むと、日本などと取引に関する構えが違って、完全に信用はできないが、しかし手順をきっちり踏んで、時には手を結んでいく、商売をしていく、という感じがよくわかる。人間関係が大事と言うこと。
それから、金で買えない人間はいない、という資本家の人間観とそれへの嫌悪感を感じることができる。けれども感触はウェットでは無く、あくまでもドライ。
プロットとしては、あらっぽくて穴があると思うけれど、時代が変わってもいまに通じる人間観、世界観、アフリカの現状をみるに、大いに読むに値する本であったと思う。