地中海殺人事件 感想  1982年

 アガサ・クリスティ生誕百年だという理由であったか、映画化作品がケーブルテレビで連続して放送されている。「ナイル殺人事件」を改めて見て、なかなか良かったので、姉妹編ともいえる本作も見てみた。
 全体としては、「ナイル」より小ぶりな作りで、ポアロの仕草などややコミカルな演出。コール・ポーターの音楽はちょっとうるさい感じ。
 「ナイル」が、エジプトの風景や、豪華な出演陣で見せる部分があったのに対し、こちらは地中海は美しいものの、異国情緒に浸ると言うほどではない。「ナイル」では、ワトソン役(ヘイスティングス役と言うべきか)の役者(昔コーヒーのコマーシャルにでてましたな。)が居たのに、こちらではポアロ一人。映画的には相方が居た方が奥行きが出るような気がした。
 また、「ナイル」では、犯人の最後に決然とした悲劇が訪れるが、こちらはそこまで持って行かず、あくまで穏やか。
 ホテルの女主人役のマギー・スミスは、落ち着いた厚みのある演技でドラマに重みを与えている。ジェーン・バーキンは今ひとつな感じ。彼女をはじめ、ほかの登場人物は芝居の書き割りからなかなか浮き出てこない。
 謎解き自体はいかにもクリスティ的。ポアロものを見慣れたものからは、ヒントはいくつもつかめるが、残念ながら、僕は解決に至らなかった。
 海はきれいだし、ポアロものが好きなら見ておきましょう。「ナイル」より、星半分落ちるという感じ?2時間ドラマ的ともいえるだろうか。