大番 完結編  1958年  加東大介主演

大番 完結編  1958年 加東大介主演

時代は戦後になっている。兜町に復帰した主人公牛ちゃんは、友人しんどんの経営する喫茶店の2階で細々と証券取り次ぎをはじめる。相場をはって大いに儲けるが、同時に女好きもとどまるところを知らない。
戦前、あこがれのマドンナであった伯爵夫人(原節子)は伯爵が戦死し、大磯で苦しい生活をしている。牛ちゃんはその家を買い取って援助するまでになる。伯爵夫人に縁談が持ち上がるにいたって、とうとう牛ちゃんは自分との結婚を考える。しかし、伯爵夫人は喀血し、誰とも結婚する意思がない、と言う。とうとう伯爵夫人は亡くなり、牛ちゃんは茫然自失するが、やがて相場師として再起する決意をするところで終わる。
 背景には、占領時代の日本、朝鮮戦争景気、スターリン暴落などが描かれる。
 成功していく牛ちゃんには、面白いことに、耐え難いような俗物性がまとわりついてくる。これは監督も計算の他だったのではないか。けれど、戦後日本の経済的成長の影には、このような人物、このような変容が無数に有ったのではないか。お話としては、牛ちゃんは原点回帰するわけだが、現実の牛ちゃん達は、凡庸な出世物語を生きたものが沢山いるだろう。また、この俗物性はつまるところ戦後日本の物質主義、俗物性にほかならないと思う。

 淡島千景は相変わらず好演。ちょい役の山村聡有島一郎も良い味出している。
 主演の加東大介は大車輪の活躍。俗物性といったが、それがユーモアを醸すところで踏みとどまっているのは彼の演技によると思う。大袈裟な演技ではないが、うまいです。