夏休みになった。 映画を見よう。 グラン・ブルー オリジナル版

夏休みになった。平均的日本のメーカーに勤めているので、夏場は1週間を越える連休となる。といってもそのうちの4割ぐらいは、普通の土日なのだけれど。HDD録画機にたまってしまった映画をまとめてこなすとしよう。
グランブルーオリジナル版
フランス人とイタリア人の幼馴染が、素もぐりの世界記録を争う話。イタリア人がガキ大将タイプでジャン・レノが演じている。フランス人は、役の名前がジャック・マイヨール
素もぐりの能力はジャックのほうが高いのだが、彼はいるかと戯れているほうがうれしいようなおとなしい男。そのジャックにほれるのが保険屋の、ちょっとおきゃんな女の子。
シチリア、チリ、コートダジュールギリシャと美しい風景は続き、美しい海が写される。しかしこの映画の眼目は、後半ジャックの記録に挑戦して失敗したエンゾ(ジャン・レノ)が死に瀕し、海に戻してくれ、というあたりから急速に露になる。
海にもぐる男にとって、海は永遠であり、美であり、友であり、母である。
ジャックにほれた保険屋の女の子は、ジャックの子を宿し、一緒に住みたい、一緒に車に乗りたい、一緒に犬を飼いたい、と訴えるがついにジャックの心を動かすことができず、彼は海にもぐってしまい、そして映画は海のそこでジャックがいるかに誘われて泳ぎだす象徴的な場面で終わる。
三島由紀夫の「午後の曳航」に描かれたような、男が挑み、また包まれる永遠であり、また無限であるところの海と(それは死の象徴でもある)、世俗の生活を欲し、子供をはらみ育てる女という2項対立が、この映画の主題と読んだわけである。
風景は美しいが、編集が少し散漫に感じられた。また、後半、話が雑になってしまった感がある。ジャックがエンゾを海に沈める事だって簡単にはできないはずではないか。物語の中ですぐそばに弟がいるのだし。また、保険屋のお姉ちゃんはアメリカから上司をだまくらかしてジャックを追いかけてきているのだけれど、途中から上司とのやり取りがなくなってしまう。前半それなりに手間をかけたところなのだからフォローしておいてほしかった。
この映画の作られた背景は知らないが、オリジナル版といっているから、もっとタイトな編集をしたバージョンがあるのかも。
世俗の価値観にまみれている僕のような人間にも、海の深い青を見せてくれた映画ではあった。