アマルフィ     映画の感想

これは駄作だ。イタリアで録りました、というだけで、中身は薄い。正直がっかりした。シナリオがわるい。2時間ドラマみたいなものだ。はぐれデカ純情派が放送されていたころ、時々香港辺りに行って、ほとんど慰安旅行しているのではというようなのりの番組を作っていたけれど、そこから何歩出ていることやら。
何より真犯人である佐藤浩市の動機が弱く、クライマックスでの行動が弱い。あの場面、織田雄二はなんでやすやすとテロリストが銃を構えている部屋に入り、外務大臣を連れ出すことができるのですか。それもいわば、佐藤演じるテロリストをヒューマニスティックに説得しながらですよ。
あまりに甘い、あそこでやめるくらいだったら最初からしなければいいのであるし、外務大臣を告発する手段はたくさんあるはずだ。佐藤浩市はそういうことを考えつくしたはずだ。さらに、バルカン半島の民族情勢はあんな説得で通じるようなものじゃないでしょう。日本人が馬鹿にされるよ。
さらに、あれだけのことをやるためだったら前半の誘拐はほとんど意味がないといえるのでは。だって、結局日本大使館だけ押さえればいいのだもの。アマルフィまで引っ張り出さなくてもさ。それにアマルフィの魅力もいくつかの風景のカットがあるだけだし。
もうひとつ。織田雄二演じるところの官僚の職分が結局よくわからない。思わせぶりな電話が何度か入るだけで。
さらに、天海祐希の罪がどうなったのか、フリーになって海岸で娘と話すのだったら、説明があるべきだ。あった?まあ、最後のほうではちょっと見るのが散漫になってしまったが。
で、つまるところ、イタリアでがんばって録りましたって言うところで終わっている。人物のリアリティが感じられない。役者の芝居は私はこういうせりふを言わなくてはならないので言っています、というところから何歩も出ていない。
天海祐希。美人であるし、熱演してもいる。でもこの役どころは彼女向きではなかったな。もっとおんなおんなした女優さんのほうが感じが出たと思う。
たとえば、織田雄二に泣いてすがる場面。あるいは、セキュリティ会社の最深部で銃を構える場面。
全体として、星5点満点だったら、ひとつ半というところでしょうか。