「ピーター卿の事件簿」 ドロシー・セイヤーズ 創元文庫  感想文

文庫カバーの宣伝文句によれば、クリスティと並び称されるミステリの女王セイヤーズ、ということである。僕は初めて読んだ。イギリスのちょっと古風な、おっとりしたミステリーは好きなので、(つまりクリスティ好きだが)その趣味から言えば、一応ストライクの作品ではあった。頭が良くて、分別のある貴族ピーター卿が邪悪な犯罪者を相手に活躍してくれるのだから、基本的に好きなパターンである。一方で、トリックがやや凝っていて、うまくプロット、語り口と溶け合っていない作品もあるような気がした。ミステリー好きと言ってもどちらかというと雰囲気を愉しむ方だから、こういう言い方になってしまうのかもしれない。クリスティとの違いは何だろう。セイヤーズも良いのだけれど。物語のコントラスト、緩急の付け方、がクリスティの方がはっきりしているのかもしれない。悪くないのだけれどね、5つ★のなかで、★三つと言うところだろうか。厳しすぎるかな。