ジーブスの事件簿 才知縦横の巻 文春文庫 P G ウッドハウス著

 

 イギリスの貴族と執事を登場人物とした、ユーモア小説。
 ユーモア小説、と書いたが、コメディ小説と言った方が良いのかもしれない。
 僕としては、品の良い、読みやすい、しかし小説としての面白さも持っている、後味の悪くない短編小説への渇望は常にあって、そういう短編小説集があれば枕頭に置きたいと常に思っている。
 かつてある程度、ある種のSFがそんな嗜好を満たしてくれた事もあるし、最近ではジェフリー・アーチャーの短編集はなかなか、悪くない。サマセット・モームのある種の短編集、コスモポリタンズなども実に良かった。
 で、この本は、どうか。
 読みやすいが、やはりコメディドラマの脚本という感じだろうか。人物の深みや、プロットの妙味を求めてはいけないんでしょうね。
 少しおっちょこちょい気味の主人が、とにかく何でも知っている執事ジーブスの掌のうちにある事を面白がれればそれでいいだろう。
 原文は彫琢を極めているというから、辞書を引きつつでも一度読んでみたい。

 しかし、続編を読むのは、また一渡りあれこれ短編集を渉猟してからになるかな、という感想である。また戻ってはきます。