「青の時代」 三島由紀夫作

三島の未読の長編と言うことで、読んで見た。確か、河野多恵子だったと思うけれど、三島の作品の中で一番立派とどこかで言っていたのではないか。(不確かであるけれど)

戦後、インチキ金融会社を立ち上げ、破綻して自殺した東大生がモデルである。しかし、そこで三島が語っていること、語りたかったことは、おそらくモデルの東大生から離れて、また戦後世代の青年の心象風景からも離れて、三島自身の感受性、世界に対する接し方、とらえ方、を時に小説としての形のゆがみもものともせずに書いているのではないかと思う。人物に対するニヒリスティックで、シニカルな描写はやはり、三島作品に共通のものである。例えば、向日性とでもいうものは三島とは無縁だ。しかし、とにかく言いたい事を登場人物に託して言いたいだけいおうとしているところ、にむしろ僕は好感を持った。しかし人物を捉えようとすると、やはり酷く観念的でとてもつかめない、と言うのが正直のところである。